【結果発表】知り合いが審査する短歌賞
2026.11.01 flatlineこんにちは。FLATLINEの青野です。
知り合いが審査する短歌賞の結果を発表します。
α賞
体育館の大きさ 神乃
受賞の言葉
はじめまして。神乃です。うれしい賞と評をいただきました。ありがとうございます。
皆さんの“知り合い”になります。よろしくお願いします。
ω賞
夏服の子供 生田泉
受賞の言葉
「暗い人生の中にある一幅の光」が自分のテーマの一つなので、選評のお言葉とても嬉しいです。
ω賞に選んでいただき、ありがとうございました!
佳作
受賞されたみなさま、おめでとうございます。
青野ゆらぎ
選考お疲れ様でした。審査のためにアプリを開発していただいたそうで。

フルRustです。
青野ゆらぎ
すごい。
短歌を読まれるのもほとんどはじめてということでしたが、こまやかな審査をしていただいてありがたい限りです。
では、さっそく講評をお願いします。
総評っていうか
今回まず、なるべく生活においてピュア(短歌リテラシーが低い)な状態を維持するよう意識したところ、私は漫画家の小林銅蟲というよりは、家でペヤングを食べよく寝ているおっさんであることに気付きました。この調子で読み始めたら私に依頼された意味が薄くなってしまうのではないかと心配になり、多少は何者か然とした心構えをしよう、と、世界のグロ画像を脇に置いてみたりもしたのだけど、おそらくそういうことではないようでした。
さて、私は現代詩を、というか小笠原鳥類の詩を読むのですが、つまり意味というよりは星空のようなものであって、短歌もそういう感じで読んでみようかなと思いました。ただそうするとイメージや不整合さが鮮烈なものばかり印象に残りがちで、本来見るべきものを見落としてしまっているかもしれない。でも私ってそんなもんだよね、と開き直って数を読んでいると、なんだかんだ勘所のようなものが掴めてきました。
不整合については、不整合であればあるほどいいということではなくて、自分の中でおさまりがいいバランスのものを重視しました。でも、本当にめちゃくちゃなものだけが持つエネルギーというものもある。それはそれでいいんじゃないでしょうか。その人が表現したいものとは別に漏れてきているなにかに惹かれることがあるかもしれませんし、人生ままならないということです。
というか、みんな短歌うまいですね(失礼すぎ)。たくさん読んでいくと、選者が何者なのかというのは案外それほど気にされていないのかもしれないな、と思い、気がラクになってきました。また、自分は賞というものに縁のない人生ですが、選ぶ側においては、選ぶという行為の傲慢さと、選ばなかったという行為への罪悪感が麻痺してくる感じが印象的でした。そうでもしないとやってられん、ということかもしれません。全人類を救済することは個人の力では不可能だということです。
選評アプリは私が短歌に集中して余計な手続きを排除する目的で開発され、実際今こうして非常に役立っています。web版もあるので電車の中でポチポチ選んだりしました。どくさいスイッチみたいですね。
以前、コミティア出張編集部で「私も見ます」とツイートしたら、漫画だっつってんのに小説を持ち込まれるなどの出来事もあり、投稿する側もわりと傲慢なのではないか、と、やがてだんだん自分のわがままで選ぼうという気持ちに振り切れてきました。悪とはこうして生まれるのだな。そんなこんなで今回の結果というわけです。
α賞
神乃「体育館の大きさ」
不思議、海、夏休み、と、私の好きな要素がいい感じのバランスでまとまっています。一見して5首目のイメージがとくに好きなのですが、全体を読み込むと3首目から子供の頃の記憶が蘇ります。年がら年中なにかの賞を獲っては朝礼で褒められる地主の倅に、それ以上なにを望むのかと嘯いて私も彼と同じ朝礼台に立ってみたかったと思うのです。夢は必ず違った形で叶い、こうして賞を選ぶ側になりました。
ω賞
生田泉「夏服の子供」
こちらも夏のノスタルジーが入っており、1首目にしびれます。「黒いしみ」から、昔はもっとベタの多い、墨っぽい漫画を描いていたなと思い出します。選評っていうか自分の話ばかりするわけですが。生きていくことについてあれこれ考えること、それはそれとして勝手に人生は続いてしまうこと、が私のテーマのひとつでもあるので、ほの暗い人生の雰囲気があるこの連作をαに対するωとしました。
佳作
ソウメンモドキ「海までの」
海シリーズですね。1首目の、「堤防」があることがその先の広がりを暗示して、褪せた青色が荒涼としたイメージを想起させます。
なにもない子「cable」
AIが名付けるオチでいろいろなことが解決するな、という発見がありました。愛などいらぬとか言いながら実際にはエモまみれのおっさんが北斗の拳にはたくさんいたよね、と思います。
宇祖田都子「ビタミンカラー」
ドクターマリオの赤と黄色のカプセルが思い浮かぶタイトルです。色鮮やかな花のイメージとデパ地下のパン屋の香り、五感に働きかけるエネルギーがあります。
荒武 飼「逃飛行」
絶妙な比喩が心地よい不整合なイメージを生んでいます。「包丁の峰ってどこだっけ?」「峰打ちの峰です」という会話がありました。刃じゃないんだからそれはそう。鯉を締める側です。
田中記念館「虹」
機能不全な銀河鉄道や滝など、あまり無用の長物になりえないもののチョイスに味があります。作虚構家さんはいまどきだとこれもAIになってしまうのでしょうか。
半田基「一般セレブ」
食べ物シリーズです。泡だけのビール、こってりとした豚の脂身、すき家の冷凍牛丼にポン酢をかけたり、好き勝手に自分の食事を思い出し、今日の晩飯に思いを馳せます。
木本公介「夏への道」
ここではないどこかを求めてあてもなくさまよいたい気持ちが常にあります。行こうと思えば案外どこへだって行ける。今から小田原くらいだって全然。でも今月はもう無駄な外食をするなと言われているのです。
ところで私は短歌を詠むことが不器用ですが、たくさん読んだことだし私も詠んでみました。
夜明け前もっとも暗い無限大 1/cos²θ